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 私は何人もの瀬嶋の生を迎え、何人もの瀬嶋の死を送った。  今度の主は何人目になるのだろう。数えることは、だいぶ前に止めてしまっていた。  十六歳だという少年は、美しい黒髪に大きな目をしている。彼が「瀬嶋惟忠」と名乗ったので、私は驚いてしまった。 「吃驚しているな。この名前は偉大な御先祖様から頂いたのだと、祖父がよく言っていた」  そう言って、二人目の惟忠は快活に笑った。  この時には私の他にも、「蒼牙」と「花影」という刀が、神体として神社にあった。制作された時代や場所は違えど、やはり魔を断つ力を持ち、意思と人に似た姿を備えている。蒼牙は気性が荒いが、人の負の気が凝った怪には滅法強い。穏やかな花影は、自然現象や歳ふりし妖物をよく治めた。  近年は再開発に伴い神社を移動したり塚を壊したりと、瀬嶋が代々築き護ってきた結界が壊れつつある。それに連れて物の怪や妖(あやかし)が数を増し、惟忠はその相手に昼夜を問わず奔走した。従うのは大抵が蒼牙か花影で、二振りが一度に持ち出される事態でも、私は神社で主の不在を守った。  それというのも、どうやら私の力が大きすぎるためのようだった。
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