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 もう、いいのだろうか。  抜けない刀など、あってもなくても、同じこと。  ならばいっそのこと、きれいさっぱり消えてしまおうか。  私の面には、笑みが浮かんでいた。 「瀬嶋には、もはや私は要らないということか」 「違うよ、斬月。そうじゃない──」  ならば。言葉を繋ごうとする惟忠を遮り、私は告げた。私の思い、私の望みを。 「私は瀬嶋と共にある。お前の父、祖父、曾祖父と共にあったように、お前の子や孫、曾孫と共にある。瀬嶋が不要と言うまでは、私はこの生を終えようとは思わない」  惟忠は一度大きく目を見開くと、ゆっくりと瞼を閉じ、再び持ち上げた。 「本当なら、要らない、と言ってやるべきなのかもしれないな」  少し掠れた声は、数秒のうちに数多の齢を引き受けたようでもあった。 「しかし、俺には言えない。これは俺のエゴだ。許してくれとは言わない、だが──済まない」  惟忠は、額が床につくほど深く、私に頭を下げた。  そんなことを望んではいない、主に頭を下げさせるなど。  私は庭に下り立った。  月は南天を過ぎて西の空にかかり、池の水面に影を映している。  斬月、それが私の名前。この世にあるものは、月でさえ斬る。そう言ったのは誰だったか。  しかし月を斬って、何になるというのだろう。闇に生きろとでもいうのか。  私は自分の名を、これほど疎ましいと思ったことはなかった。
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