第2章 デバイス

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1月。デバイスの埋め込み完了とほぼ同時に、英子との同棲生活を迎えることになった。 同棲中、裕二は、人体デバイスの利便性を、身をもって体感していた。 食事中だろうが、英子と話している時だろうが、一切怪しまれることなく、浮気相手と連絡を取り合うことができた。 LINEやメールが届くと、特殊な電気信号に変換され、手のひらに小さな痒みが起きる。 これでメッセージの受信が分かる仕組みになっていた。 もちろん、大量受信などで痒みが煩わしい時は、マナーモードに設定することもできた。 操作の仕方についても慣れてきた。 最初は右の人差し指で、左手の手のひらに投影されるキーボードを律儀に打ち込んでいったが、やがて左手だけでの操作が可能になった。 左手の親指や人差し指、中指を動かすだけで手のひらの画面に、簡単に文字を打ち込めるようになった。 左手があまりにも便利なせいか、裕二は、英子の前で携帯電話を触ることがほとんどなくなった。 それと同時に、浮気への情熱を取り戻しつつあった。 浮気心が加速した理由は、左手のデバイスだけが原因ではない。 同棲による英子へのストレスもあった。
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