第4章 元カノ

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「花江、寄りを戻さないか?」 裕二は意を決して言った。 花江は驚いた表情を浮かべた。 「何言ってるの? 彼女いるじゃない」 「彼女とは別れるよ、もちろん」 花江には、彼女とは結婚前提で同棲している、とまでは言っていなかった。 「そんなのだめだよ」 「俺は、あの時、花江に言ったように仕事を精一杯頑張った。そして成功して戻ってきた。迎えに来たんだんだよ」 花江はうつむくばかりだった。 しばらくして、首を横に振った。 「それは、できないよ」 裕二は訴えかけるように花江に話した。 花江と離れて初めて気づいたこと。 英子といる日々は、なぜか孤独だったこと。 花江と連絡している時だけが、孤独を忘れさせたこと。 「できるわけないじゃない」 「なんで……」 「言ったじゃない、私好きな人いるから」 「片思いなんだろ?」 「今日、その人が告白してくれたの。もちろん付き合うことにしたの」 裕二の視界が揺れた。 だから花江は遅刻したのか。自分の前にその男と会ってたのか。 「……。なんだよ、それ」 裕二は、惨めだった。勝手に舞い上がり、そして振られた。 「ごめんなさい。もう会わないほうがいいよね。連絡も……」 「そんなことないだろ、連絡くらい」 3年前とは逆の立場だった。裕二が花江にすがっていた。 「お互い、恋人いるんだし……」 「連絡くらい取ってもいいだろ!」 気が付くと、大きな声で花江に迫っていた。 ウェイターや周りのお客がこちらを見ている。裕二はすぐに我に返った。 3年前、一方的に別れ、花江から連絡が来ても、無視し続けた裕二。 それを考えると、ずいぶんと勝手な言い草だった。 「そんな大声出さなくても……」 花江は下を向いたまま、それ以上何も言わなかった。 会計時、花江は半分払うよと財布を出したが、裕二は「いいよ」と制した。 それでもしつこく払うと言う花江に対して、裕二は再び大きな声で怒鳴ってしまった。 俺は最低な野郎だ……。裕二は心の中でそう思った。
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