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「疲れてるの?」
優しく問いかける英子。
裕二は顔を上げた。
その瞬間、裕二は、青ざめていく英子を見た。
「どうした?」
裕二は目を丸くして聞いた。
「その腕は、何……?」
裕二は英子が指さす先の、自分の左腕を見た
実験、実験、実験、実験、実験、実験……
電光掲示板に流れてくる文字のように、実験という言葉が皮膚上に走る。
左手だけではない。右腕にもびっしりと、
許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない……
と電光文字が踊る。
「きゃあああああああああああ」
英子は悲鳴をあげた。
許さない、という文字はLEDライトのように光を放ち、裕二の全身の皮膚上を駆け巡る。
普段、受信すると一瞬小さな痒みが起きるだけだったが、今回は違った。
大量に受信しているせいか、体中が痒い。
耐えきれない痒さが、裕二を襲った。
ぎゃああああああああ――
痒くて痒くて、叫びながら、全身を掻きむしった。
浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者……
全身の皮膚上を、踊り狂う文字。
裕二はパニックになりながら、鏡を見た。
身体だけではない、顔もそうだ。
裕二の皮膚という皮膚の上に文字が、メッセージが走っている。
痒すぎる……。裕二は転げまわった。
浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者……
許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない……
英子は悲鳴をあげ、テーブルの下に避難し、裕二を見ている。
裕二は受信機能をマナーモードにしようと、左の手のひらを操作したが、全く効かない。
裕二は、痒さをこらえながら、稔に電話を掛けた。
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