第5章 報い

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「疲れてるの?」 優しく問いかける英子。 裕二は顔を上げた。 その瞬間、裕二は、青ざめていく英子を見た。 「どうした?」 裕二は目を丸くして聞いた。 「その腕は、何……?」 裕二は英子が指さす先の、自分の左腕を見た 実験、実験、実験、実験、実験、実験…… 電光掲示板に流れてくる文字のように、実験という言葉が皮膚上に走る。 左手だけではない。右腕にもびっしりと、 許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない…… と電光文字が踊る。 「きゃあああああああああああ」 英子は悲鳴をあげた。 許さない、という文字はLEDライトのように光を放ち、裕二の全身の皮膚上を駆け巡る。 普段、受信すると一瞬小さな痒みが起きるだけだったが、今回は違った。 大量に受信しているせいか、体中が痒い。 耐えきれない痒さが、裕二を襲った。 ぎゃああああああああ―― 痒くて痒くて、叫びながら、全身を掻きむしった。 浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者…… 全身の皮膚上を、踊り狂う文字。 裕二はパニックになりながら、鏡を見た。 身体だけではない、顔もそうだ。 裕二の皮膚という皮膚の上に文字が、メッセージが走っている。 痒すぎる……。裕二は転げまわった。 浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者、浮気者…… 許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない……   英子は悲鳴をあげ、テーブルの下に避難し、裕二を見ている。 裕二は受信機能をマナーモードにしようと、左の手のひらを操作したが、全く効かない。 裕二は、痒さをこらえながら、稔に電話を掛けた。
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