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電話はすぐに繋がった。
「稔、どういうことだ!?」
電話は繋がっているのに無言だった。
「稔、答えろ! どういうつもりだ!」
稔は低い声で唸るように答えた。
「それはこっちのセリフだ」
「なんだと」
「花江を傷つけやがって。絶対に許さないからな」
その口ぶりから、花江の新しい彼氏が、
稔だということが瞬時に理解できた。
「俺の体をどうしたんだ?」
「見りゃわかるだろ。体中にデバイスを埋め込んでやったんだよ」
「手のひらだけのはずだろ、そんなこと頼んでない」
「無料でやってやったんだ。これくらい良いだろう」
稔は涼しい声でそう言った。
「この野郎ぉぉぉぉぉ……」
「そもそも、お前が花江にあんなことしなけりゃ、使う予定がなかったモノだ」
「ふざけるなよぉぉぉぉ。てめぇ!!!」
「延々とメッセージを送り続けてやる」
この男は、恋人に隠れて浮気をしている
この男は、恋人に隠れて浮気をしている
この男は、恋人に隠れて浮気をしている
この男は、恋人に隠れて浮気をしている
光り輝くデジタルの文字が、全身の皮膚上を流れる。
全身のむず痒さに耐えきれず、裕二は、身体中を掻きむしり、叫んだ。
「どういうことなの、これ!!! いったい何をしたの?」と
英子はパニックになるばかりだった。
主導権は、人体改造を行った向こう側にある。
明らかに分が悪かった。
「稔、俺が悪かった。頼む、勘弁してくれ」
「勘弁できないね……」
「頼む……」
「おやすみ」
そう言い残し、稔は電話を切った。
おやすみ
おやすみ
おやすみ
おやすみ
おやすみ
身体中に駆け巡る言葉……。
裕二は叫び、のたうちまわりながら、全身を掻いた。
全身を床に擦り付け、叫びながら、ゴロゴロと、寝返りを繰り返す。
体中が、赤く擦り切れ、血が出ようとも、掻きむしるのを止められなかった。
皮膚がボロボロと剥がれ、爪に血が滲む。
全身に文字という文字が駆け巡り、不気味に青白く光る、裕二。
気絶しそうだ。
怯えきっている英子。
裕二は、
ごめん……。ごめん……。と、うわごとのように、英子に言いながら、
意識が薄れていくのを感じていた――。
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