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1か月後の年明けには、英子の提案で、結婚を前提に同棲をすることになっていた。
英子の厳しい監視が毎日続くとなると、携帯電話に触れることは、ほとんどできなくなる。
仕事に支障をきたすことは目に見えていた。
いや仕事だけではない。
裕二には浮気相手がいた。
今後は、時間拘束もさらに厳しくなり、浮気相手と会うことも一苦労だ。
それどころか、連絡する手段すらままならなくなる。
同棲開始の日まで、1か月を切り、裕二の浮気衝動は日に日に弱まっていった。
英子に対する恐怖心からなのか、マメに連絡を取ろうという欲求も、女に会いたいという欲求も、なくなっていった。
最盛期には5人いた浮気相手も、今では1人が限界だった。
裕二にとって浮気と仕事の活力は表裏一体だった。
浮気で発散ができないせいか、仕事の成果もみるみる落ち込んでいった。
もともと、人一倍出世したい裕二にとって、その状況に耐えられなかった。
英子の言う通り、今の会社でどうなろうが、どうでも良い話かもしれない。
だが、プライドが許さなかった。
裕二は大学時代の同級生である稔に電話で相談をしてみることにした。
稔は国立大学の電子工学科の助教授であった。
手の中に隠しておける、携帯と連動する小さな端末でも作れないか、という相談をするつもりだった。
もちろん、浮気のことは伝えず、仕事に支障をきたしている件だけ伝えた。
電話越しで稔は「ちょうど試したいものがあったんだ」と声をあげた。
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