第3章 同棲生活

2/2
前へ
/13ページ
次へ
裕二は湯船の中で、花江にLINEを送っていた。 12時を回っていたが花江はすぐに返事をくれた。 『久しぶり! 私は元気だよ!』 花江は、元気にやっていること、まだ結婚はしていないこと、あの時別れてから誰とも付き合っていないことを、教えてくれた。 しばらくやり取りが続いた後、お互い『おやすみ』と返し、LINEの会話が終わった。 裕二は、左手を抑えながら、 自分が孤独感にさいなまれていたことに気付いた。 その夜を境に、裕二と花江のLINEのやり取りが始まった。 英子との生活を続けていると、どうしても花江との同棲生活と、比べてしまう。 花江は出かける準備は早いが、英子は1時間以上かかる。 英子の歯ブラシを間違って使ってしまったときは、ひどく怒られた。 花江の時は笑って許してくれた。 お風呂上り、パンツ一枚でウロウロしていても、花江は何も言わないが、英子は「だらしない」と不機嫌になる。 今の生活、すべてが窮屈に思えた。 英子との会話よりも、花江とのLINEのほうが楽しかった。 夜、同じベッドで英子が傍にいても、孤独感を感じることが多くなった。 そんな時は、左手を抱いて寝た。 花江との秘密のやり取りは、お風呂場かトイレに限られた。 トイレやお風呂が、必然的に長くなり、英子も心配するようになった。 「大丈夫? 疲れてるの?」 裕二の長風呂に、英子が顔を出すようになった。 「ごめん、寝落ちしてた……」 「本当に、お仕事、無理しないでね」 英子は裕二に対して、優しい言葉を投げかけることが多くなった。 『好きな人ができたの』 ある時、花江は裕二にそう連絡してきた。 裕二はそれに食いつき、花江に色々と質問した。 『どこで知り合ったのか』『どんな相手なのか?』『相手は花江のことをどう思っているのか』 だが、花江から返ってくる返答は、『それは秘密』とか、『片思い中が一番楽しいのかね』と、はぐらかすものばかりだった。 当たり前だが、その相手は自分ではない。 しかし、気になって仕方なかった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加