第4章 元カノ

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第4章 元カノ

裕二は花江から連絡が来るのを心待ちにしていた。 花江の連絡が待ち遠しかった。 受信を知らせる、痒みが、待ち遠しかった。 そして、ついに耐えきれず、花江にLINEで、こう送った。 『会わないか?』 しばらく返事は来なかった。 何度も何度も、返事が来てないか、手のひらを見た。 1時間して、ようやく返ってきた。 『でも、彼女さんに悪いんじゃないの?』 明らかな嘘だったが、裕二はこう送った。 『ちゃんと、彼女には話を通しておくよ』 こうでも言わないと、真面目な花江は会おうとはしてくれない。 その返事を受けて、花江は了承してくれた。 花江と会う日、英子には残業で遅くなると伝えた。 最近では、仕事以外の電話をほとんど放置しているため、 裕二への束縛も弱くなっていった。 それどころか、「体調、気を付けてね」と 英子は裕二を心配している様子すら見せ始めていた。 裕二は花江より、早めに待ち合わせ場所に着いた。 一方の花江は待ち合わせの時間に、少し遅れた。 付き合っている時の花江は時間には正確だった。珍しいなと、裕二は思った。 「ごめんなさい」 裕二と付き合っていた時よりも、花江は数段、可愛くなっていた。 ますます花江のことを好きになりそうで、忘れられなくなりそうで、裕二はモヤモヤした。 「大丈夫。あ、ご飯どうする?」 裕二はそう言って微笑んだ。 「何でも大丈夫」 「じゃあ、あそこは?」 裕二は駅前から見える高層ビルを指さした。 ビルの最上階にある高級フレンチ店に、花江を案内し、そこで食事を取った。 料理もそうだが、そこから見える景色にも、花江は子供のように感動してくれた。 普段から高級店に行き慣れている英子を案内しても、こうはならない。 別れてからの三年間の積もる話に花が咲いた。 花江には別れる際、新しい恋人ができたことは伝えていない。 伝えたのは、仕事に集中したい、これだけだった。 花江と別れた後、自分がいかに出世したかを語った。 裕二は花江に振り向いてもらおうと必死だった。 花江は「すごい、すごい。本当におめでとう」と、自分のことのように喜んだ。 花江と寄りを戻すことになれば、 英子と繋がりのある今の会社を辞めなくてはいけない。 それも覚悟の上だった。 裕二は、自分の才覚なら、どこでもやっていける自信があった。
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