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海に沈んだ都市遺跡。それが、世間を賑わす海面低下と海底の隆起の助力によって地上に姿を晒して居た。一度は海に完全に沈んだこともある都市だが、水が引いたこと探索が容易になり、考古学者を引き連れた世界政府の調査が入って2年。政府連中がようやく退散したことで物好きなサルベージャーたちが遺跡に群がり始めた頃、タツミ・タチバナも都市遺跡を訪れて居た。
タツミはサルベージャーが見向きもしない外れにある建物を訪れていた。海に沈んでいたとは思えないほどにしっかりと形を残しており、浸水もしていないようだった。
非常灯だけが仄かに灯る静かな遺跡の中をタツミが進んでいく。歩む先、ぽっかりと壁が口を開けていて、タツミの意識を引いた。近づけば、そこがスライド式の機械的なドアであることがわかる。その先を警戒しながら覗き込んで、捉えた光景にタツミが息を呑んだ。
これまでの静謐な遺跡の雰囲気はどこにもなかった。瓦礫の山。大掛かりな装置がひしゃげて、瓦礫の下敷きになっていた。それが一箇所ではなく、等間隔に並んでいることから、個室と装置がセットでこの部屋を埋めていたのだと教えている。今は随分と風通しが良くなっているようだが。
瓦礫にこびりついた赤い斑点から意識的に目を逸らし、タツミが辺りを探る。部屋の中は生きている非常灯もまばらで、視界が通りにくい。タツミは背負った荷物からライト取り出して、部屋の探索を始めた。そうしてすぐ、小さなプレートが転がっていることに気づく。
「E05913-……後は読めないな」
記号の羅列があることは確認できるものの、タツミには解釈ができなかった。首を振って頭を切り替えると胸元にぶら下げたペンダント型のデバイスを起動させる。タツミが操作すると、デバイスが地図のホログラムを浮かび上がらせた。一点に赤いポイントが打たれ、その点について補足するようにE05834という英数字が並んでいる。ただ、ホログラムはノイズが混じったように乱れ、赤い点もあちこちに飛んでしまっていた。壊れかけのデバイスでは目的地の大雑把な場所までしか掴むことができない。
「プレートを探してみるか」
見落としが無いように注意しながらタツミが進んでいく。しばらくして個室の体裁を残した場所に行き当たった。E05862-坂下拓真。後半は変わらず読めないが、数字から目的地に近づいていると信じる他ない。
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