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「アカリはいつからここに居るんだ?」
なんでもない風で、タツミが尋ねる。アカリの体が一瞬ピクリと止まって、携帯食から口を離した。その様子にタツミが苦笑する。
「悪い。答えたくないならいい。じゃあ、アカリは何歳だ? 俺は16になったばっかなんだ」
「16? 兄さんと同じ歳……」
「ん? 兄貴がいるのか?」
「はい。辰巳兄さん。二つ上なんです。タツミさんと同じ名前ですね」
懐かしむような、悲しむような、そんな顔で灯里がタツミを見た。その表情が直視できず、タツミが立ち上がる。
「少しここで休んでてくれ。あとで外に連れてってやるから。もしよければ、だけどさ」
そう言うタツミを見上げる灯里の目は、寂しげに揺れていて、今にも泣き出しそうだった。
「急にどうした? そんな目で見られてもな。その足で歩かせる訳にも行かねえし」
そう言ってみたものの、少し鼻声で「すみません。なんでも無いんです」と答える灯里に、すぐにタツミが折れた。
「――だあ! わかったよ! 置いてかねえから安心しろよ!」
瞳がさらに潤んでいくのを見ていられず、タツミが頭をガリガリと掻く。
「すみません」
「謝ったことを後悔させてやる」
タツミはバックパックを背負うと、布に包まった灯里を抱き上げる。灯里が小さく悲鳴をあげたが、タツミは無視する。
「あの、これは、ちょっと、恥ずかしいです」
「知らん。じゃあ待ってるか?」
「……それは、嫌です」
「いいじゃねえか。誰が見てる訳でもないし」
「タツミさんが見てます」
「あー。まあ、あれだ。物干しに吊るされてるとでも思っとけよ」
「タツミさん、モテなそうですね」
「落とすぞ」
「ごめんなさい。ちょっと調子に乗りました」
「別にいいけどな」
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