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タツミは灯里を抱えたまま、その先も一通りみて回った。少し行けばすぐに行き止まりで、その道程も変わらず崩れた小部屋と壊れた機械しかない。何かを探した訳でも無いが、収穫もなく二人はタツミのデバイスが示しているであろう小部屋にん戻ってきた。
「お医者さんなんですか?」
「代々な。途絶えたことはないらしい。俺も一応、親父の助手として立派にパシリをしてるんだぞ」
「立派? あ、ええっと、それって継ぐ人がいなかったらどうするんですか?」
小首を傾げてから、失礼だと思ったのか慌てて灯里が言い募る。
「外から連れてくる。タチバナの名前に縛られてでも、名を連ねたいって言う変人は以外と多いらしいからな」
灯里の話に乗って答えながら、瓦礫に寄りかからせるように彼女を下ろす。床に降ろされた灯里の視点は一点に止まっていた。それを無理やりに引き剥がした灯里が、タツミを見上げる。
「ここがタツミさんの探してた場所?」
「多分な。タチバナに継がれてきたものがもう一つ有る。それがこれだ」
タツミが胸元にぶら下がるデバイスを掲げてみせる。
「骨董品でな。壊れかけてるけど直せる技師がもう居ないらしい。これに惹かれてさ。頑なに医者を続ける家系と、ある場所を示すデバイス。どんな因果があるもんかとガキの頃から一度来てみたかったんだ」
胸元のデバイスを弾いて、戻って来たところを握りしめる。
「まあ、有ったのは壊れた装置と崩れた部屋だけだったけどさ」
「タツミさんは、ここに何か有ったらどうするつもりだったんですか?」
「ん、持って帰れるようなお宝とかなら持って帰る、くらいにしか考えてなかったけど。まあ、悪いようにはしねえと思うぞ」
そう言って、タツミが足元に転がって居たプレートを拾う。
「E05834-アカリ・タチバナ――いや、立花灯里か? これ、アカリの名前でいいんだよな?」
灯里が先ほど凝視していたプレートだ。それをタツミに突きつけられて、灯里が渋々と頷く。
「何ですぐ言わなかった、とか思う訳だが、すぐに認めたのでそれはいい」
灯里の顔を覗くように座って、タツミが頷く。
「連れて行きたいんだが、お宝さん的にはどうよ?」
タツミの確認に、灯里は首を小さく縦に振った。そのちょっと泣きそうな顔から目を逸らして、タツミが頷く。
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