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「まるで眠っているみたい」
「この間まであんなに元気に過ごされていたのに」
「自宅で亡くなったんですって」
「死因は?」
「心不全だそうよ」
「どなたが見つけたの?だってこの人、一人暮らしだったでしょう」
「同じ学校の――ほら、あそこにおられる方よ」
通夜の会場。周囲の声や視線を感じながら前田雄二は突然亡くなった同僚の焼香を行っていた。手を合わせ、顔を上げると屈託のない笑顔の同僚、山本慎吾の遺影が目に入った。
「山本先生。お前、そんな急に逝くなよな。まだ26歳じゃないか」
山本慎吾は今雄二が務めている県立高校に、今年新採用として着任した元気な保健体育教師だった。雄二は国語担当で教科こそ違うが、雄二も同じく新採用で着任した。その縁もあり、雄二の方が2歳年上だったが仲良くなっていた。気心しれた同僚でもあり友人でもある慎吾のおかげで、慣れない教師の仕事に四苦八苦しながらも、雄二は楽しい日々を送っていた。
しかし2日前の10月13日、慎吾が無断欠勤をした。今までそんなことが一度もなく、携帯に電話を入れてもつながらないため、もしかしたら何かあったのかと思い、雄二は同僚の斎藤綾香と一緒に慎吾のアパートを訪ねた。
アパートの玄関で呼びかけても返事がなく鍵もかかっていたので、大家さんに頼んで開けてもらい、家に入った。何度も訪ねたことのある部屋なので雄二は遠慮なく家の中を進んでいく。
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