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「山本先生、いるのか?」
慎吾が寝室として使っている奥の机と布団しかない部屋で布団の中に慎吾の姿が見えた。近づいて顔を見ると、どうやら眠っているようだ。とても幸せそうな顔をして目を閉じている。
「山本先生、起きないとだめだろ」
雄二は近づいて慎吾をゆすったがすぐに異変に気付いた。さっきは気づかなかったが、慎吾の顔は表情こそ幸せそうだが、明らかに血の気がない。全身の血の気がさあっと引くのを感じながら、雄二は掛布団を剥ぐと胸元に耳を当てた。
心臓が動いている鼓動を感じない。
雄二はがばっと体を起こすと急いで心臓マッサージを始めた。
「前田先生、どうかなさったのですか?」
明らかにおかしい状況に綾香が声をかけた。
「斎藤先生!今すぐ救急車呼んでください!山本先生の心臓、動いていません!」
そのあと、救急車が来たり警察が来たりして、雄二は第一発見者としていろいろ訊かれたが、どう答えたのかはっきりと覚えていない。後から雄二の死因が急性心不全だと聞かされたときも、信じられない気持ちでいた。
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