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「前田先生、大丈夫ですか」
雄二ははっと意識を現実へと戻し、声をかけられた方を見た。雄二の勤めている高校の飯塚一心教頭が心配そうに声をかけた。
「え、ああ、はい。大丈夫です。焼香の邪魔になっていますよね。すぐどきます」
雄二はすぐ後ろの人に焼香をゆずった。
会場を見渡してみると、慎吾の両親や雄二の高校の教職員以外に、雄二の知らない慎吾の友人たちや親類など多くの人であふれていた。それだけ慎吾は周りに好かれていたのだろう。なのに、こんな急に亡くなるとは、誰が想像していただろうか。
「前田先生、ちょっといいですか」
一心に連れられ、雄二は会場の外へ出た。
「教頭、何ですか?」
「前田先生、あなたにこんなことを頼むのもどうかと思いますが、今度の日曜日に山本先生の家の片づけを手伝っていただけませんか。山本先生は一人暮らしをされていましたし、ご両親はこんな状況ですし、体力的にも片付けるのが難しいようで、誰も山本先生の部屋を片付ける人がいないのです」
「わかりました。私は何度か山本先生の家を訪ねたことがありましたから、どこに何があるかは大体見当がつきます」
「ありがとうございます。他に何人か声をかけますから、他の先生方と一緒に日曜日、よろしくお願いします」
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