1492人が本棚に入れています
本棚に追加
昴が心配そうに私を見つめている。
視線が交わった瞬間、不意に泣きそうになって俯いた。
よほど情緒不安定なのだろうか、自分でもこの感情が何なのか説明出来ない。
涙を抑える術を必死に考えていると、私より一回り大きな足が視界に入り込んだ。
そして、顔を上げようとする前にそっと抱きしめられた。
「今度は何を悩んでいるのか知らねぇけど、一人で抱え込むな。俺にも背負わせろ」
普段は意地悪なくせに、どうして貴方はこういう時に優しいのだろう。
お陰で泣かないでいる事が至難の業になってしまった。
目の前にある服で涙を吸い取らせようと、昴の胸に顔をうずめる。
息を吸ってふわりと流れ込んできたのは、同じ柔軟剤を使っているのに私とは少し違った昴の香り。
私を安心させてくれる香りだ。
最初のコメントを投稿しよう!