予祝の行方

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昴は暫くして私を抱きしめていた腕を離すと、眉を下げて微笑んだ。 「こんな小っちゃい身体でボロボロになるまで戦って…少しは俺の事を頼れ、バカ」 暴言を限りなく穏やかな声色に乗せながら、私の頭を撫でる。 その感触の心地良さに、そっと目を閉じた。 「お前はよく頑張ったよ。頑張った」 「昴…」 口を開きかけた時、突然階下で加奈さんが何事かを喚く声がした。 今度は何なの…? 私の身体が反射的に強張ったのを、昴は見逃してくれなかった。 力強い腕で引き寄せられ、異様な空気から守るように再び抱きしめられる。 固唾を呑んで耳を澄ましていると、苛立ちの滲む荒々しい足音が遠ざかり、最後に玄関ドアが開閉する乱暴な音が響いた。 「…加奈、出ていったのか」 昴は私の耳元で、独り言のようにそっと呟いた。
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