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異性から告白されちゃったら、なんて甘酸っぱい展開が私に訪れる訳もない。
そんな現実を十分に理解しているからこそ、ドアの向こうで交わされている会話が呑み込めなかった。
「ヒナが学区外に遊びに行った件で、揉めたことがあったよね。あの時俺は詩織ちゃんに酷い言葉を投げつけた。彼女の傷ついた顔は今も忘れられない。こんな俺じゃ彼女を守れる訳が無いって、嫌でも自覚させられた」
満月より僅かに欠けた十三夜の月、涙が点々と染み込んだ公園の砂、自分が部外者だと突き付けられた絶望。
あの日の記憶が切れ切れに脳裏を過った。
それに、と琢磨さんが話を続ける。
「この子ならヒナの良いお母さんになってくれるんじゃないか、っていう父親としての目線も少なからずあったから。そういった利害を考えている時点で、詩織ちゃんに対して誠実だとは言えないだろう?一人の男としての目線で…利害抜きに詩織ちゃんを想っている昴が選ばれて、当然だ」
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