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そうだ…琢磨さんの気持ちを知らなかったから然程気に留めなかったけど、思えば彼の行動はヒントを残していた。
多賀家を出て行く日、庭先で琢磨さんに抱きしめられるかと思ったあの一瞬。
結局頭を撫でられただけだったから、私の勘違いだと決めつけていた。
だけど、もし彼の腕が私を抱擁する意思を持っていたのなら。
今更ながらそこに琢磨さんの想いを読み取った。
「ごめん、さっき『昴は関係ない』って言ったけど、少しは関係していたかも。加奈と元に戻る事を選んだのは、詩織ちゃんに振り向かれる見込みがないと分かっていたから。俺さえ感情を棄てて加奈を迎えれば、ヒナも母親が戻ってきて喜ぶだろうと思ったんだ。とことん女々しいよな」
琢磨さんは苦しげに後悔を語っていく。
消し去りたい事実を敢えて口にする事で、まるで自分自身を痛め付けようとしているみたいに。
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