予祝の行方

40/43
1487人が本棚に入れています
本棚に追加
/450ページ
そうだ…琢磨さんの気持ちを知らなかったから然程気に留めなかったけど、思えば彼の行動はヒントを残していた。 多賀家を出て行く日、庭先で琢磨さんに抱きしめられるかと思ったあの一瞬。 結局頭を撫でられただけだったから、私の勘違いだと決めつけていた。 だけど、もし彼の腕が私を抱擁する意思を持っていたのなら。 今更ながらそこに琢磨さんの想いを読み取った。 「ごめん、さっき『昴は関係ない』って言ったけど、少しは関係していたかも。加奈と元に戻る事を選んだのは、詩織ちゃんに振り向かれる見込みがないと分かっていたから。俺さえ感情を棄てて加奈を迎えれば、ヒナも母親が戻ってきて喜ぶだろうと思ったんだ。とことん女々しいよな」 琢磨さんは苦しげに後悔を語っていく。 消し去りたい事実を敢えて口にする事で、まるで自分自身を痛め付けようとしているみたいに。
/450ページ

最初のコメントを投稿しよう!