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暖房の風が届かない冬の廊下は冷え込みが厳しい。
氷のような床に触れている足の裏が、ヒリヒリと痛む。
それでも私はこの場から動けなかった。
陰で幸せを願って貰えて、これほどの優しさを与えられていたというのに、私は今まで何を返せただろう。
「にしても昴、詩織ちゃんの気持ちに気付いていなかったの?」
「いや、逆にどうして兄貴は分かってたんだよ」
「だって詩織ちゃん、いつも昴の事を目で追っていたから。きっと本人は無意識だろうけど、あれは物凄くバレバレだった」
「マジかよ…兄貴、妙なところで勘が鋭くなるよな」
「ほんとにね。加奈に対してこの勘が働いてくれたら良かったのに」
和やかな空気の中、再び加奈さんの話題が浮上する。
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