予祝の行方

42/43
1489人が本棚に入れています
本棚に追加
/450ページ
暖房の風が届かない冬の廊下は冷え込みが厳しい。 氷のような床に触れている足の裏が、ヒリヒリと痛む。 それでも私はこの場から動けなかった。 陰で幸せを願って貰えて、これほどの優しさを与えられていたというのに、私は今まで何を返せただろう。 「にしても昴、詩織ちゃんの気持ちに気付いていなかったの?」 「いや、逆にどうして兄貴は分かってたんだよ」 「だって詩織ちゃん、いつも昴の事を目で追っていたから。きっと本人は無意識だろうけど、あれは物凄くバレバレだった」 「マジかよ…兄貴、妙なところで勘が鋭くなるよな」 「ほんとにね。加奈に対してこの勘が働いてくれたら良かったのに」 和やかな空気の中、再び加奈さんの話題が浮上する。
/450ページ

最初のコメントを投稿しよう!