78人が本棚に入れています
本棚に追加
1
2014年という年は様々な意味で一事件記者にしか過ぎない私にとって衝撃的な一年だった。
その年は屠蘇の酔いも未だ冷めやらぬ年度当初から恐るべき事件と鮮烈的な出会いに同時に出くわした私自身の奇妙な現実体験もさることながら、今まで恐怖小説や推理小説の中でしか出会ったことがないような様々な怪事件や怪しげな出来事や猟奇的な噂が幾層にもなって重なりあい、縺れ、絡まりあい、複雑怪奇を窮めたような陰惨にして筆舌に尽くしがたい事件の数々が起こった年でもある。
この平和な日本の大都会東京にあって犯罪事件の記者などという殺伐とした仕事をしてはいるものの、さした禍福もなく32年という人生を過ごし、平々凡々と緩やかな流れのままに生きてきた私が、まさか運命という名の巨大な奔流に流され、溺れてしまいそうな濁流に巻き込まれてしまうなど、その時は露ほども知りようがなかったものである。
無論、運命などと軽々しく大袈裟に口にしてよいものでもないが、現実の悪夢となれば話は別だろう。それはまさしく運命的な悪夢との邂逅だった。
それは荒らぶる狂雷と風雨にも似て傘もなき現実にひたすらに降り注ぎ、脆弱な私の精神を完膚なきまでに揺さぶっては叩き伏せ、総身と頭の震えを止まらなくさせた。学生時代に好んで読んでいたH.Pラブクラフトの恐怖小説の表現を借りるなら、正に名状し難い悪夢のような一年であったのだ。
何を馬鹿な大袈裟なと読者諸氏には嘲笑されそうだが、事実2013年からその年は近年の犯罪事情にはめずらしいくらいの犯罪事件の当たり年で、世間の方でもやや異常な興奮と狂騒をもって歓迎されていた事件も多かったことは賢明なる読者諸氏なら覚えておいでのことだろう。
今やインターネットが生活の一部となってスマホやガラケーという言葉で区別し、“スマホ歩き”に“ながら食べ”などマナーを嗜められるほど日常茶飯事に使われるようになってくると、過去の犯罪事件や出来事など、即座にアーカイブとして処理されデータ化していくだけにすら思えてくるものである。
殊に犯罪事件の記者などをしていると呆れるほど様々な事件を取材するものだ。中には不景気な世相を反映したような貧窮きわまっての事件もあれば、政治的な思想や民族的背景に端を発する事件も、身の毛もよだつような凶悪な犯罪事件も昨今とみに急増している外国人による犯罪事件もある。
最初のコメントを投稿しよう!