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「お姉ちゃん!!」優人も声を上げる。
お姉ちゃん??
文乃は驚く。
優人が警備員の手を逃れて、勢いよく文乃の前まで駆けてきた。
「もう、お姉ちゃんが忘れ物するから届けにきたんだ。それなのに、中に入れなくて困っちゃって…」
優人の台詞についていけずに黙っていると、険しい顔をした警備員が文乃に近づいてきた。
「すいません。この大学の生徒さんですか?」
警備員に尋ねられ、「はい」と答えた後、慌ててバックの中から学生証を取り出して見せる。
警備員は文乃の学生証を見ると、その事実を確認できたらしく、険しい顔を少し緩めた。
「実は弟さんが図書館に来館した他の学生の後をついて入館したという報告を受けまして、注意をしていたところなんです。
付き添いの入館は可能ですが、申請が必要ですので」
警備員の話を聞き、優人が何をしたのかをだいたい把握できた。
「そうだったんですか……。すみません」と頭を下げる。
「これからは気を付けてください」
文乃が現れたことで事態は収拾したらしく、警備員や図書館のスタッフは速やかに去っていった。
静かになった図書館の入口の前で、文乃と優人は顔を見合わせる。
「もう、何をやってるのよ……」
ほっとしたのもあってか、優人を責めていた。
優人は「ごめん」としょげて肩を下げた。
「この図書館、昨日はオープンキャンパスだったから自由に入れたけれど、普段は大学関係者じゃないと入れないの」
文乃が図書館のシステムを説明すると、優人は苦笑いして、「うん。知ってる」と答えた。
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