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 この学校は真夜中に始まる。月明かりが照らす街中に、二つの動く影があった。 「おそよーう」 「おそよう」  クロは学校への道で学友のソラに会い、挨拶を交わした。 「相変わらずキミは黒いねえ」 「相変わらずって何だよ。黒猫なんだから黒から変わりようがないだろ」 「ハハハ。そりゃそうだ」  クロは呆れた顔をした。茶猫のソラはだいたいがこの調子で、話の内容はいつも適当だ。 「それより、最近あまり学校に来なかったがどうしていたんだ?」 「旅行に行ってたんだよ。家族が」  ソラは家族がの部分に力を入れる。その態度にクロはすぐに気が付いた。 「ああ、置いて行かれたか」  クロの予想は当たっていたようで、ソラの顔がぶすっと不満そうに変わる。 「一週間もホテルに預けられたよ。家族なんて聞こえはいいが、結局俺らは置いて行かれるんだよな」 「しかたがない。俺らは猫だ」 「そうだな、俺らは猫だ」  二匹の猫は暗い夜道を歩く。周りは塀のある二階建ての一軒家が多く、十二時をとうに越えた今は、電気の付いている家もほとんどなく静まり返っていた。猫達の学校はこの住宅街の一画にある。 「あら、なあに? 辛気臭い顔しちゃって」  塀の上から細い身体をしならせ軽やかに白猫が下りてきた。住宅街一の美人猫、モモだ。 「やあ、モモ。今日も可愛いね」
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