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「あと2週間ないんだね」
「そーなのっ。だから、めちゃくちゃ忙しくてさ」
そもそも、先生と生徒だから、卒業までふたりきりで会っちゃダメ、なんて言われてて、相談も段取りも出来ないまま、卒業後1ヶ月以内に入籍も引っ越しも済ませようって、どんな無理ゲー…。
「千帆? まだ話してるの? もう行くわよ」
お母さんがあたしに話しかけてくる。
「あ、は~い。ごめん、七海。出かけるんだ、今度ゆっくり話そうね」
「ん、無事に結婚出来てからでい~よ~。で、今から何処行くの?」
「…けいちゃんとお母さんと新居のインテリア揃えに」
「仲直りしたの?」
「…一応」
仲直りした、よね? したことになってるよね? あたしはまたも、卒業式の夜の続きを思い出す…。
微妙な空気の中でご飯食べて、そのあと車で家まで送って貰った。
「寄ってく?」
「いや、やめておくよ。もう、遅くなっちゃったし。お父さんとお母さんによろしく言っておいて」
「…ん」
あたしがドアに手を掛けても、けいちゃんはハンドルに腕を載せたまま、動かない。…まだ、怒ってるのかな。『サヨナラのキス』も、なしかな。『おやすみなさい』と言いかけた時だった。
「俺の誕生日に入籍ならさあ、千帆の誕生日に結婚式する?」
「えっ」
けいちゃんの話の突拍子もなさに、あたしは開きかけたドアを締めて、再び助手席に座り込んだ。
「千帆、6月だからちょうどいいかもね」
「お、怒ってたんじゃないの?」
「怒ってないよ。千帆がうろたえるのが面白いから、怒った風は装ってみたけど」
大人げないとは呆れたけど、まさかあたしの反応で遊んでたなんて。
「けいちゃん、サイテーっ」
あたしが強くけいちゃんを詰っても、けいちゃんは平然とした顔。
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