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けいちゃんとあたしの視線が絡む。けいちゃんは、あたしの顔を傾けて、「もう不安にさせたりしないから」そう囁きながら、あたしにキスを落とした。
これまでの苦しさを解き放つように、これからの幸せを噛みしめるように、何度も何度もキスを繰り返す。
「け…いちゃん…」
もっと、して。もっと、欲しい。さっきとは違う理由で、自分の瞳が潤んでるのがわかる。けいちゃんを見上げると、けいちゃんはあたしの視線を妨げるように、あたしの頬を自分の胸に押し付けて、抱きしめる。
「そんな目で見ないでよ、千帆」
「どう、して? けいちゃん、あたし、もっとけいちゃん、感じたい…っ」
キスだけじゃやだ。けいちゃんはあたしのものなんだって。あたしはけいちゃんのものなんだって、もう、何も障害ないんだって。あたし、早く確かめたい。
「…うち来る?」
「ここじゃダメ?」
あたしの我儘にけいちゃんは困ったように笑う。冬の終わりの残照が、弱々しく何もない部屋にそそぎこむ。
「俺、こーゆーとこですんの、すっげー嫌いなんだけど」
言いながら、けいちゃんはコートを脱いで、床に投げると、その上にあたしの身体を横たえた。
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