桜色の春

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「けいちゃん、学生の時何かバイトやってた?」 「ん~、俺はこんなちまちましたバイトやってなかったけど」 「何やってたの?」 「カテキョとあと、夏休みとかに遺跡発掘のバイト」 「遺跡…」 ダメだ、参考にならない。でも、持ってきたコーヒーを飲みながら、けいちゃんは言った。 「けどこの春休みは、バイト無理じゃないか? やることいっぱいあるよ?」 けいちゃんに言われるまで、ころっと忘れてた。 「え、あ、そっか。えっと」 「おっきいイベントは顔合わせと入籍と引っ越しかな? 新居に必要な家具も買わなきゃだし、大学に提出する書類もあるだろ?」 新生活のスタートは、思ったより忙しそう。 これでけいちゃんと思う存分いちゃいちゃ出来る?なんて思ってたけど…現実は、そう甘くはない、のだった…。 「顔合わせ、来週の土曜って思ってるんだけど…千帆の家の都合どうかな」 「あ、聞いてみる。大体土日はお父さん休みだし、特に何もないと思うけど」 「あと入籍日、いつがいい?」 スーツの胸ポケットから、手帳を取り出して、けいちゃんが聞く。 「入籍?」 「千帆に希望がないなら、今度の週末にうちの親父とお袋来るだろ? そん時に婚姻届の保証人の欄に名前書いて貰って、そのまま出しに行っちゃってもいいんだけど」 「婚姻届っ」 つまり、あたしとけいちゃんの結婚記念日ってことかあ。結婚。あ、なんかいい響き。
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