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僕は上げた顔をゆっくりと伏せた。
涙が零れそうだった。
その時、
「えっ!?」
バサバサッと小鳥が羽ばたく音。
急いで顔を上げる。
一番高い枝に、ノアがチョコンと座っている。
「ノア……」
それが実物でない事はわかっている。
半分の月は満月になっていた。
あの時見た光景。
違ったのは、僕を見下ろしてニコッと微笑んだ事。
「ノア!」
僕の呼び掛けに尻尾を振って応え、
「行っちゃうの?」
再び空を見上げ、優しく大きな月へと飛び込み消えた。
「そうだよね……
僕も優しくて強くならなきゃね」
視線を戻し、
「いつか僕も、その木のてっぺんで月を見れるようになるからね」
決意と共に、力強い足取りで帰宅した。
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