真夜中のエーデルワイスで

13/13
前へ
/13ページ
次へ
「何 いんの?」と陽輔が手首の天然石ブレスレットを撫でる。おれがあげたものだ。 「うん。でも幽霊のお客様は夜に御願いしてるから。今はいいよ。陽輔ちょっかい出して取り憑かれたら三万な」 「うへ たけえ」 「安い方。霊媒の仕事はお前が思ってる以上に大変なの」 そういって、無視を決め込むとその霊もふらりと消えてしまった。 「そうだ。陽輔ケーキ食べよ。在庫処分。手伝え」 そう言い、余ったケーキを並べると陽輔が眼を輝かせた。 「あの人夜来るかな」 陽輔が見えない客が居ると思い込み ひっそり話をする 「そうだね。来たらケンさんが起こしてくれるからいいよ」 そう言い、膝で休むケンさんを撫でると、小さく鳴いた。 商店街の一角は 今日もひっそりと時間が過ぎる。 其の片隅の小さな喫茶店 当店は 視えないお客様も歓迎です。 え?さっき話していた神様が誰かって? あなたの想像にお任せいたします。 小さな喫茶店のマスター 朝祈 ゆうが 小さな黒猫のケンタロウさんを撫で 穏やかに笑った。 ようこそ “真夜中の”エーデルワイスへ。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加