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「モカが200グラム、ウチのブレンド2種類が500グラムづつ…ブルマンが100グラム、ニルギリが150グラム…コロンビアが500グラム…
コスタリカが500グラム、グァテマラが200グラム…ダージリンが200グラム…これがエスプレッソ200…。
アッサム100グラム…エルサルバトル100グラム、ウバが100グラム…。
ブラジルが100グラム………なあ、何この納品書…グラム別種類別に分けようよ…何でコーヒーの間に紅茶を混ぜてるの?
うっかり見落としちゃうかもしれないよ。もう……ちーちゃんはちゃんとやってくれるのにー」
はあ、とため息を一つ吐いて陽輔をじと眼で睨む。
「俺とゆうの仲なんだから細かい事いちいち気にすんなよ!ちゃんとあればいいだろー」
ぽんぽんと強めに肩を叩く陽輔。そういえば、陽輔の親父さんが納品に来たとき、祖父が良くため息を吐いていた。
親子は良く似ているという事だなぁ、と痛感した。
見づらい納品書を見ながら一通り喫茶物の納品を確認しているとキッチンから甘い匂い。
『みゃー』
とケンさんが甘える様鳴いた。
「焼けた?ありがとケンさん」
「お!ゆうのケーキか!!!」
その匂いに 陽輔がどかりとカウンターへ。
「はいはい」
とおれは納品書を置きキッチンへ。
焼けたばかりのシフォンケーキと、味見のためのチョコレートケーキを切り分け差し出した。
「まだ待っててね」
そう言い生クリームを泡立てようとしたが…
帰ってくるとほかほかのシフォンケーキと冷えたチョコレートケーキは跡形も無く
『みゃーん』
座って大人しく待つケンさんがひと鳴き。
「…ケンさんはこんなに良い子なのに、陽輔は駄目な子ですねー」
…抱き上げたケンタロウさんは大人しく身を委ね、おれの言う事を理解した様に鳴き声をひとつあげた。
そして、ざりざりとおれの頬を舐めるケンさんは何かを見つけた様に遠くを見始めた。
一点を見つめるケンさんの額を軽く撫で、足元に戻すと小さな黒猫は一度足に絡みついて歩いていってしまった。
ケンさんの見ていた方向を一度見つめたおれは、再び開店準備に取り掛かった。
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