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そして、今日もエーデルワイスの一日が始まる
店を開けると常連さん、そうでないお客さんで賑わい、手伝いに来た陽輔に感謝しあっと今に昼下がり。
そして客足の少なくなった夕方、一組の親子…120センチも無い小さな少女と背が高く若い母親が来店した。
偶に来るお客様だ。
空いている店内で、親子はカウンター席へ座った。
「テーブルも空いてますけど…大丈夫ですか?」
「ううん、いいのよ!私達いつも此処に座っていたの」
うふふと笑った母親は、メニューを見ないで「ホットココアとホットのダージリンと、チョコレートケーキを一つ下さい」とおれに注文してきた。
ああ…と入り口の冷蔵ケースを見る…売り切れだ。
「ごめんなさい…チョコケーキ売り切れちゃって…」
「やだ!!!チョコのケーキがいい!!!」
…突然、大きな声で駄々を捏ねはじめたのだ。
母親が慌てて静止をかけ他の商品を勧めるも…娘はおれの前で今にも泣きそうな顔で「いやだ」と駄々をこねている。
…店内には静かなジャズが蓄音機から流れる。
時に優雅で、時に激しくて…時に寂しげな、おれの大好きなジャズ。
「…ごめんなさいね…この子、ずっと入院しててね。
今日はようやく外出許可がでたの。
それで、すごくここのチョコレートケーキを楽しみにしてて…」
ぐずる娘を宥めた母親が、おれにそう謝ってきた。
「…すみません」
実際、少女の言葉は正しい…母親が謝る必要はない。
本来ならば こんな時間に切らせてはいけない定番商品。
オーナーになってから日が浅くて 感覚が掴めていないんだ
必死に泣くのを堪える少女の頭を数回撫で、おれは母親に頭を下げた。
…でも、母親は笑顔で「また二人できます」
そう言ってくれた。
帰る頃には、少女も笑顔に戻り、「またくるね、お兄ちゃん」
そう、いってくれた。
二人が見えなくなるまで、おれは外で頭を下げた。
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