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その日の夜は満月。
今日も慌しく時間は過ぎ、店を閉めてゆっくりと風呂に浸かって温まる。
ケンさんは猫のくせにお風呂が好きなので、桶に湯を溜めてやると喜んで入ってきた。
二人・・・性格には一人が一匹を抱きながらリラックスしていれば就寝は大体22時。
「おやすみ、ケンさん」
おれの布団で一緒に丸まるケンさんをひと撫ですると、電気を消して眠りについた。
眠りについてから何時間寝ていただろうか。
『みゃあ』
そう、ケンさんが鳴き俺を起こす
「…ん…ケンさん。お客さん?」
そう呟き 着替える…時計を見ると深夜の二時
別に寝ぼけているわけではない
エプロンベストを巻き、ケンさんが飛び乗ると真っ暗な店内へ…
店に顔を出す前に欠伸を一つ。
「いらっしゃいませ」
そこには…亡くなったと聞いた美季ちゃんが入り口に。
もちろん、生きていない…いわゆる、“幽霊”というやつだ。
「…美季ちゃんだね、いらっしゃい」
…普通なら悲鳴を上げるほど驚く状況だが、おれは回りに人が居たら…おれに対して驚くであろう程落ち着いていた。
信じる信じないという信憑性は店の今後に関わるし、自分から色々な人へ言う事はないが…
おれは、俗に言う“幽霊”が見える人間だ。
祓い屋と呼ばれる霊のお仕事をやっていた母方の家系と霊感が強い(らしい)父方の家系。
この二人の血が混ざっているおれもまた、霊感が強い。
小さい頃からなんとなく見えていて、20歳を越えた頃急にはっきり見え出して。
それからずっと霊やその類を見ることが出来る。
だから 占いなんかも驚く程当たるし 血筋なのか…祓う事もできる
だからと言ってオカルト全般が怖くないわけではなく、おれ自身たぶん怖がり。
肝試しやホラー映画、お化け屋敷なんてとんでもないし心霊写真なんてみたら気分を悪くする。
だけれど、目の前に居る青白い光の様な美季ちゃんには驚かなかった。
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