蘭丸 始まりの恋

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「どっかの飼い猫だったんだ」 「そりゃそうだろ、でなきゃこんなに人に慣れてないだろうしな」  蘭丸はぐにゃりと体を動かすと完全に睡眠体勢に入ってしまった。 「なあ、お前、俺のコト怖くねぇの?」  しばらく無言で蘭丸の背中を撫でていた大和が口を開く。 「え?」  楓が聞き返すとぷいと顔を背けて言葉を続けた。 「ほら俺、先公にも目ぇつけられてるし、体もでかいしよ、頭悪いし。万引きしたことあるし」  楓は小さく首を振った。  怖くなんかないよ。だって大和くん、ホントはすごく優しいじゃない。猫にパンあげたり、膝の上に乗せてあげたり。  伝えたい言葉がいくつも浮かんでくるのだが、楓には口に出す勇気がなかった。  もし、言葉にしてしまったら、自分の想いが伝わってしまうかも知れないから。  代わりに違う言葉が口をついて出た。 「ねぇ、大和くん、あの本欲しかったの?」 「あー?」
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