48人が本棚に入れています
本棚に追加
「どっかの飼い猫だったんだ」
「そりゃそうだろ、でなきゃこんなに人に慣れてないだろうしな」
蘭丸はぐにゃりと体を動かすと完全に睡眠体勢に入ってしまった。
「なあ、お前、俺のコト怖くねぇの?」
しばらく無言で蘭丸の背中を撫でていた大和が口を開く。
「え?」
楓が聞き返すとぷいと顔を背けて言葉を続けた。
「ほら俺、先公にも目ぇつけられてるし、体もでかいしよ、頭悪いし。万引きしたことあるし」
楓は小さく首を振った。
怖くなんかないよ。だって大和くん、ホントはすごく優しいじゃない。猫にパンあげたり、膝の上に乗せてあげたり。
伝えたい言葉がいくつも浮かんでくるのだが、楓には口に出す勇気がなかった。
もし、言葉にしてしまったら、自分の想いが伝わってしまうかも知れないから。
代わりに違う言葉が口をついて出た。
「ねぇ、大和くん、あの本欲しかったの?」
「あー?」
最初のコメントを投稿しよう!