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「あの、万引きしようとしてた本。『シルバーソウル32巻』」
「いや、べつに、どーしても欲しいってわけじゃねぇけど」
蘭丸の背中をがしがし撫でながら大和が答える。
「あの、もし、大和くんがいいならだけど、貸してあげようか?」
「は?」
「実は僕、親に内緒で全部持ってるんだ、『シルバーソウル』。ベッドの下に隠してあるの」
「マジで?」
「マジで」
真面目に答える楓を大和が呆れ顔で見つめ返す。
「大和くんさえよければ、うちに読みに来てもいいよ。勉強するって言えば親も平気だし」
「マジで?」
「マジで」
大和がついに吹き出した。
「お前っておもしれー!」
「なっ、なんだよっ、僕はまじめに言ってんのに!」
「うへへへへへ」
大和は大声で笑い出した。膝の上に居座ったままの蘭丸が、驚いて目を丸くしている。
「だってお前、おもしれーコト言うじゃんか。マンガ貸そうとか、家に遊びに来いとか。 クラスの奴らみんな、俺と口利いたりしねぇし。万引きしようとしてるの止めるとか、お前が初めて。なぁ、なんで俺なんかに構うんだよ」
大和に言われて楓は答に困る。
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