いち

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 高校二年の冬、早くも初雪の降る中。  僕は鼻まで隠れるほどマフラーをぐるぐると巻いた姿で、寒さに身を竦めて歩いている。  本当はニット帽もかぶりたいし、中がもこもこしている雪用の長靴も履きたい。  だけど本当は、そこまで寒くないのも知っている。同じ学校に通う生徒たちの中には、手袋とマフラーはしていても、コートを着ていない人もいるんだから。  同じ人間だとは思えない。  なぜ自分はここまで寒さに弱いのか。筋肉があまりないからだろうか。贅肉もないがりがりの身体。少し走っただけで息の上がる体力のない身体。  僕の横を走りぬけ、校門を通り過ぎた生徒に眉を寄せる。  雨じゃないけどさ。雪が降っているんだぞ。傘も差さず、コートも着ず、マフラーさえしていなかったあいつは化け物か。  上げた視線を下げ、僕は寒さに震えながらのろのろと歩く。  学校に入れば。教室に行けば。少なくとも今より暖かいはずだ。  自分の席に鞄を置き、手袋を外してマフラーを取る。ダッフルコートの引っかけを外そうとして、まだかじかんだ手では困難なのに気づく。  仕方がないのでそのまま椅子に座り、手に息を吹きかけたり擦ったりしていたら化け物が近づいてきた。  傘も差さず、コートも着ず、マフラーさえせずに僕を追い抜いていった生徒。後藤忠志。クラスメートの化け物。 「トモちゃんおはよー」 「おはよ」  にこにこと笑顔全開だけど、整った男らしい顔はなんだか胡散臭い。だってこいつは、いつでも笑顔。いつでも全開の満面の笑み。
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