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「違う。お前は俺をここに連れ込んで、何が望みかって聞いてるんだよ」
「……」
明らかに不機嫌な様子の荻野の問いかけに少女は不思議そうに彼を見返す。その目は一体何を言っていたのかとでも言いたげで可愛げのない目だと荻野は思う。
最近の女子高生は皆こんな態度なのだろうか。それとも自分がナメられているだけか――何にしても、彼女の態度からはそこはかとない投げやり感が感じ取れた。
「あれ?」
荻野の問いかけから数秒、彼女は小首を傾げながらベッドの縁に座る荻野へと近づく。
明かりの元、少女の姿を近くで見ると最初の印象よりも小柄なうえ、随分と色白で清楚な印象を受ける。図書室で大人しく本でも読んでいそうなイメージだが、実際は援助交際で遊ぶような女だ。
「お兄さん、私とセックスしたくて付いて来たんじゃないんですか」
「は?何言ってんだこのクソガキ」
「私がクソならお兄さんだってクソですよ。だって、そういう顔してますし……ああ、でもお兄さんは私を助けてくれましたね。前言撤回します、クソは私でした」
「……」
荻野の目の前で立ち止まり、笑顔でそう言ってのける少女に苛立ちを覚えるも、ここで彼女を殴っても自分にメリットは無い。
そもそも今の自分は野球賭博に勤しむ身だ、間違っても警察の世話にはなりたくない――表向きは優良な会社員を装っている荻野はこみ上げる苛立ちを堪え、少女が自分の隣にすとんと腰を落とす姿を黙って横目で伺っていた。
「そういえばお兄さん、もう苦しくはありませんか?」
「……ああ、まあ」
「そうですか。なら良かった」
荻野のぶっきらぼうな返答に少女は笑う、その安堵の笑みは嘘ではない気がすると何となくだが荻野は思う。
「お兄さんは私を助けてくれたから、私なりの恩返しの方法を考えてたんですけど」
「身体で返そうってか」
「はい、それが手っ取り早いと思ってたんですけど。だってお兄さん、セックス目的の女子高生なんてそう簡単には捕まりませんよ」
「……」
少女は相変わらず投げやりな口調でそう呟く。どうも彼女の様子を伺う限り、彼女自身はさほどセックスに飢えているようには見えない。
荻野が気になるのは、彼女が滲ませている達観したオーラ――笑顔をちらつかせながらも、まるでこのまま世界が滅亡しても構わないとでも言いたげな冷たい眼差しをしていることだ。
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