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澄み渡った漆黒の空に、数多の星がチカチカと瞬いている。銀色の三日月は夜空の皮肉な笑みのようだ。
幸いにも風はないが、空気は細く鋭い針のように、肌の露出した部分を容赦なく突き刺してくる。
「うー、寒ぃな」
ぶるっと体を震わせて呟いたのは政宗だった。眼光鋭く巨躯の持ち主であり、リーダー格の男である。もともとは隣街から越してきた新参者であったが、その荒々しい見てくれと持ち前の腕っぷしの強さで、あれよあれよという間にリーダーにのしあがった。今では彼の前を横切る者はいない。
コンビニの裏手で、建物と塀に挟まれているとはいえ、時間を追うごとに冷えていく空気からは逃れられない。
「寒いっすね。今日は一番の冷え込みって、ニュースで言ってたっすよ」
小さな体をこれでもかというほど縮こませて銀次が言った。寒さに声が震えている。
「てめえニュースなんか観んのかよ?」
「ははっ! 銀次はジジイと二人暮らしだもんなあ」
「うっせーぞそこの二人! 二人暮らしで何が悪ぃんだよ、ああ? 言ってみろ!」
「よせよくだらねえ」
ため息混じりの政宗の言葉に、銀次とシゲル、蛍は瞬時に押し黙った。政宗の機嫌を損ねるのは得策とは言えない。
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