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まぶしさに顔をしかめると、大きな声が耳に降ってきた。そんなに大声出さなくたって、耳は悪くないのに。
うっすらと目を開ける。
目の前に拓海がいた。
変なの──笑ってるのに、泣いてるようにも見える。
「よかった、雅、おまえ助かったんだよ!」
何を言ってるんだろう?
状況がまったく掴めないまま、雅はぐるりと辺りを見回してみた。
拓海の部屋だった。
拓海のベッドに寝かされていた。
それは別段驚くことではないが、拓海の足もとに政宗の姿を認めると、飛び上がりそうなほど驚いた。政宗は一応飼い猫だが、半ノラ状態で、他人の家に上がり込むことなどある筈がないのに。
「よかった、雅、よかった」
何度も頭を撫でながら拓海が泣いている。政宗が優しい声で「うにゃー」と言った。
少しずつ、思い出してきた。
サシャ・ヒューティアに会うためにアメリカに行こうと思い立った。商店街で小学生に捕まり、それを政宗が助けてくれて、走り出した直後に自転車とぶつかったのだ。
「なーぉ」
雅の声は少し掠れてはいたが、しっかりとしていた。
「うにゃー」
政宗が答えた。
そうか、助かったんだ。よかった、またこうしてみんなと会えた。
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