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けど、なんだろう、何かが心に引っ掛かる。何か、忘れてはいけない夢を見ていたような。
「おまえさー、ちっこいのにすげーヤツだよ! 病院でサジ投げられて、最期はおうちで過ごさせてあげてくださいって言われてさ。おまえ3日もずっと寝たままだったんだぞ? さすがに俺も覚悟したってのにさ!」
安堵から拓海はいつになく多弁だった。拓海にはずいぶんと心配をかけてしまった。それに政宗にも。「ありがとう」だけじゃ足りない。
雅はよろよろと起き上がると、頭を拓海に擦り寄せ、それから床に降りて政宗にも同じようにした。
「アメリカに行けなかったのは残念だったな」政宗がぼそりと呟いた。「でも生きてれば、チャンスはいくらでも──」
「うん、いいんだ」
そう言って雅はにっこり笑った。
「夢が叶わないのって、たぶん残念なことなんだと思う。でも大きな夢を持ち続けながら生きていくほうが、あっさり叶う夢より何倍も楽しいと思う」
「なんとなくそれ説得力あるけど、そういうもんか?」
「そういうもんだと思うよ。それに──」
それに、一番大切なものは自分のなかにあるって、気付いたから。
(ФωФ)人(ФωФ)
fin.
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