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思わず雅も目を閉じて、様々な色に変化するステージを思い浮かべた。
実際にコンサートに行ったことはない。だが、コンサートのDVDは毎日のように観ている。拓海が無類の音楽好きなのだ。
雅が音楽好きになったのも拓海の影響だった。初めて聴いたときは、耳をつんざく悲鳴のようなエレキギターの音に思わず逃げ出したりしたが、音楽というものは実に様々な形態のものがあり、エレキギターは叫ぶだけではないと、ある時気付いた。拓海がレッド・ホット・チリ・ペッパーズを聴いていたときだった。
「おまえもレッチリの良さがわかるのか」
拓海の隣に座って、夢中でDVDを観ていたら、拓海が嬉しそうにそう言ってハグしてきた。
「おまえ、MIYABIとおんなじ名前なんだから、ギターやってみればいいのに」
何気ない拓海の言葉を思い出して、雅はふと目を開けた。
ギター……。
たった6本の弦から生み出されるとは思えない、溢れ出す音色、リズム。もしギターが弾けたら、どんなに楽しいだろう。
雅の脳裏でひとりのギタリストが、ソロを奏で始めた。
長い髪を振り乱し、そこにあるすべての音に没頭し、音と一体化している──雅のギターヒーロー。
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