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夜の帷が降りる頃、彼は友人宅からの帰り道を早足で帰宅していた。
街灯がぽつりぽつりと並ぶ人通りの少ない寂しい道。
――いつもと同じ道の筈なのに何だか心が落ち着かない、後ろから誰かが追いかけてくるようだ。
ふと彼は立ち止まる。
――あれ? こんな場所にアンティークショップなんて建っていたっけ。
年代物の木で建てられた凝った作りの店構え、大きなガラスのショウウインドウには古いが味のある品物が所狭しと並んでいた。古い店なのに寂れている様子はなく、日本なのに気品のある英国店のような落ち着きを醸し出していた。
――ちょっと寄ってみるか。
普段の彼なら素通りしていただろう、しかし先ほどから感じていた背後からの気配に逃げるように芳ばしい香りのするドアを開け入店したのだった。
カランカランとドアベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
まるでその店の置物のような初老の男性が挨拶をする。ロマンスグレーの髪に薄手のカーデガンを着こなす紳士だった。
「初めて入るけど、前から建ってましたかね」
彼がそう尋ねると落ち着いた声で、
「はい、ずっと昔からここで商いをさせてもらってます」と返事をした。
「そう……、少し商品を見せてもらうね」
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