カブリオールレッグ

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先週末尋ねた友人が今週は彼の家へ遊びに来ていた。コンビニで買った酒を飲みながら談笑する二人。 「――そう言えば」と、ナイトテーブルを購入した経緯を友人に話す彼。 「へぇーそれは珍しいな、俺にもその台を押させてくれよ」と鳴き声を聞きたがる友人。 特に断る理由もない、彼らはふらふらと千鳥足のまま寝室へと向かう。 部屋の電気を点けるのも面倒な彼はあれだよとナイトテーブルを指差した。 「ほう、これが噂の猫ですな」と、冗談交じりにナイトテーブルに触れようとする友人。 そこへ。 薄暗い部屋の空気を裂かんばかりの大きな猫の鳴き声が壁を振動させた。 驚いた二人は耳を押さえてしゃがみ込んでしまう。 彼らしかいないはずの部屋に生き物二匹の気配がする。 目を凝らして見るがその姿を捕らえることは出来ない。 壁を、天井を、床下を、何物かが走り回っている。 暫くすると、突然ネズミの断末魔の鳴き声が聞こえた。先ほどの猫と同じぐらいの音量だ、そんなネズミなどいる筈もない。 しんと静まりかえる寝室、暫くじっとしていた彼だが気配が治まったのを見計らい立ち上がる。 「何だろうな今のは」、彼が友人に問いかけるが返事がない。 猫の鳴き声を聞いたときに耳を押さえしゃがんだのだろう、そのままの姿勢で部屋の隅で小さくなっている。 恐る恐る友人に近づき体を揺すると、ゴロリと仰向けになる。 口から血を流し白目を剥いて横たわる友人。 「え、マジか……。おい!」 どうやら気を失っているだけらしいが、血を吐いているのが気になる彼は救急車を呼び彼を病院へと運んだ。
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