第1章

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寒さで身震いしながら目を開けると、そこには、恐怖の表情で私を見下ろす家内や子供達の顔があった。 「ギャァァァ――――」 「ヒィィィ――――」 悲鳴を上げながら逃げ散る家族を横目で見ながら、狭い箱の中で身体を起こす。 箱? いや違う、棺桶だ。 さ、寒い。 棺桶の中に入れられている氷のせいで、私の身体は冷え切っていた。 棺桶から這いずり出て、押し入れから毛布を取り出し包まる。 部屋から悲鳴を上げながら出て行った家族と入れ違いに、飼い猫のタマが部屋に入ってきて私の足に頭を擦り付けた。 寒さのせいで身震いが止まらない身体を少しでも温めるため、タマを抱き上げ胸に抱く。 抱きながらタマの頭を撫でてやる。 タマのお陰で身体の震えが収まった頃、部屋の開け放しだった襖が廊下側からノックされ、主治医の先生が顔をひきつらせながら部屋の中に入って来た。 部屋に入って来た先生が私に声をかけて来る。
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