王子の奇行(後編)

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・ 「マナミにこれを飲ませろ──小指の爪半分の量でいい…茶に仕込め。いいな──」 「───…」 セナは手渡されたそれを見つめる。 「返事は」 「はい…」 白い粉の入った小さなガラス瓶。セナはそれが何の薬か聞くことができずにいた。 主人の言葉は絶対── 使用人であるセナが何か言える筈もない。何だかんだとザイードは愛美を大事にしている筈だ。 それは今までのザイードの取り乱したような行動で確認している── そう悪い物ではないだろう── セナはそう信じるしかなかった。 ザイードは瓶を見つめるセナの後ろに人の足音を聞いた。 「後でまたくる──…」 裏の戸口から足音の方を気にして目を配るとザイードは一言伝えて姿を消した。 闇に紛れるようにしてザイードの黒装束が翻る。 邸の壁に隠れて寄り掛かるとザイードは目を閉じて月を仰いだ── 少し薬が効きすぎている。 自分の鼓動の早さにザイードは苦し気な吐息を繰り返した。 これでマナミを思いきり抱ける── 少し気を抜いただけでザイードの頭の中は愛美で完全に埋め尽くされていく。
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