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ザイードの濡れた瞳に映る月が妖しく歪んでいる。
まるで水面に反射して揺れているような月をザイードは微睡(まどろ)んだ瞳でぼんやりと眺める……
頬は少し紅揚し、唇から漏れる息は色気を帯びている。淫らな欲情が躰の奥から沸いてくる──
うねるように押し寄せる欲の波。
ザイードは胸を掻き乱してその熱に身悶えた。
待ちきれない──
このままの勢いでは愛美を壊しかねない…
だがそれを抑えることよりもこの猛りを愛美にありったけにぶつけることしか頭に浮かばない──
蜜月の宵
甘く責めくる一時
ザイードは切実に愛美を欲していた──
「これ砂糖は入れた?」
「──う、うんっ…」
給仕室の小さなテーブルを挟み、向かい側に座った愛美は自分の方に置かれたカップを指差してセナに聞いていた。
寝る前に軽く一杯。
お茶はカフェインがないから寝る前の水分補給にはうってつけだ。
砂糖を入れたと言われて愛美はさっそく味見した。
「うん、丁度いいかも。ありがとっ」
「……っ…はは、丁度だった?…」
礼を返す愛美の顔を何故か真っ直ぐ見ることができない。セナは目を游がせながら愛美に返事をしていた。
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