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『猫には九つの命がある』
かと言って全ての猫がそうじゃないらしい。
普通の猫の中から稀に生まれる特殊な猫。どうやら俺はその特殊な猫だったようだ。
初めて死んだのは、生まれて間もなく。出産後すぐに死んでしまった母親からは乳も出ない。同じ腹から生まれた兄弟達も飢えから次々と力尽きていく。
俺もその時に死んだはずだった。
確かに薄れゆく意識の中で死を感じた。だが、次に目を覚ました時に見えたのは、自分の周りの兄弟達の亡骸とぽつりと佇む俺の姿。
何故、俺だけが生きている。
訳も解らぬまま、再び飢えて死ぬのを恐れて必死に走り回った。
虫や残飯を喰らい、たまに妙な物を口にしたのか二、三度死を感じた。
それでも多少身体が大きくなってくると、妙な物を喰らったくらいじゃ死ななくなる。
次に死んだのは、通りを走る荷車の車輪に轢かれた時。身体中痛くてもう二度と起き上がれないと思った筈なのに、次に目を覚ますと傷も癒えて通りの端に立っていた。
もしや俺は死ねないのだろうか。
この輪廻が永遠に続くのではないか。
そんな時、どこかの猫の集会でたまたまある噂を聞いた。
『この世には九つの命を持つ猫が居るらしいよ』
誰もその九つの命を持つ猫を見た事が無いのか、そんなのいる訳ないと言い出す猫が大半だった。
けど俺はその噂が本当だと知っている。
現に俺がそうだからだ。
子猫の時から何度死んだか、遡って数えてみる。
六回……いや、人間の子供達に石を投げ付けられて死んだな。正確には七回だ。
なら俺は、後二回死んだら本物の死を迎えられるのか。
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