埋もれ火

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十分程他愛ない世間話をして電話を切った 理美は、そのまま帰宅する気になれず 東海道線に乗った。藤沢で小田急線に乗り 換えて鵠沼海岸で下りる。 この駅に降り立つのは何年ぶりだろうか。 卒業後、理美はずっと湘南に住んでいた。 国道百三十四号線が頻繁に通る生活道路に なっても、鵠沼海岸は通過するだけで、 訪れる機会は一度もなかった。 あれから既に四半世紀経っている。それ でも彼女は道を覚えていた。差し入れの 西瓜を買った果物店が目に入った。
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