埋もれ火

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そして、夏の間だけ賢一が住んでいた アパートへ続く踏み切りは警報機が鳴って いた。 この角を右に曲がれば目の前は鵠沼海岸だ。 雨上がりの砂浜は晩秋の穏やかな波が 静かに寄せては引いてゆく。理美はひとり 海岸に佇んで海を眺めていた。 「やっぱりここか。」 その声に振り向くと男が立っていた。深い インディゴブルーのデニムパンツに同色の 布帛のジャケット。細い青のストライプの 入った白いシャツ。賢一だ。
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