埋もれ火

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だが、まさかその日のうちに再会するとは 考えもしなかった。しかも、この鵠沼 海岸で。懐かしさに駆られてつい立ち 寄ってしまったのが仇になったのか。 時間が戻っていくようだ。 あの夏の日、彼と歩いた砂浜。立ち並ぶ 海の家とビーチパラソル。サンオイルの 匂い。セピア色に染まった思い出の中の 自分や賢一がどこかにいるような気がした。 二人で太陽が水平線に沈むのを見ていた。 残照の中に星がひとつ見えた。賢一は 理美を促して立ち上がった。
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