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私、夜空アリアは今、ある人物の後ろにいる。その人物は私の前を歩いている。私に気づく様子はない。それもそのはず、私は今、その人物を尾行しているのだから。
その人物の名前は、青空フォミットという。何度も何度も耳にし、絶対に忘れることのない名前。
そんな彼を今、私は尾行している……。
自分のしていることに少々罪悪感を感じるがこれは必要なことなんだ仕方がないな、うん。
彼は曲がり角を曲がり、歩く。
私は長い尻尾をなびかせながら、そのあとを追う。そのとき、前方にあった鏡を見た。そこには、真っ白な毛並みに細くしなやかな手足、長く伸びる尻尾、大きな空色の瞳を持つーーー、美しい猫が写っていた。その猫を見てどうしようもない溜息が出た。この白く美しい猫こそ、今の私だった。
(…でも、きっと何かが見つかるはず)
昨日の夜、突然この姿になってしまった。ベッドに寝ころびお気に入りの小説の最新巻を読んでいると、どこからか声が聞こえてきたのだ。
『……あなたに、お願いがあります…』
その声を聞いた次の瞬間、今のこのような姿になってしまった。一瞬の間にどうやって…、しかし声の主はその思考を中断させた。
『……まずは、その状態で明日、彼ーーフォミットのあとを追ってください。ただし、気づかれてはなりません』
「……!ニャニャーッ!!(…なんでそんなことを!はやくもとに戻してよっ!!)」
『…あなたの思うことも分かりますが、まずは彼を追って見てください。……きっと、あなたの答えたが見つかるはずです。その答えが分かれば、もとに戻れるでしょう』
「……?」
なにを言っているのだろう、と思った。だが同時に、その答えが知りたいとも思った。最近彼は、どこか変なのだ。なにかを隠している…、そんな感じがしていた。そして、この声にはどこか信用に値するなにかを感じる。思えば、この声、どこかでーーー
『…引き受けて、くれますか?』
と、その声は問うてくる。
混乱も迷いもある。だが、もし彼の隠していることが分かるのなら……
「…ニャ。ニャニャー(…分かった。やってみるよ)」
という出来事があったのだ。そして今に至る。
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