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彼は裏路地を次々と曲がり、奥地へと進んで行く。辺りが徐々に暗くなっていく...、そろそろ目的地に着くのだろうか?
それから尾行すること数分、彼はようやく足を止めた。私はすぐに物陰に隠れて様子を窺う。
そこは物が散乱した小スペースだった。
こんなところに何の用だろう?と思い空間を観察する。しかし、至って普通な場所だった。特におかしなところなどーーー
いや、なにかがおかしい。一見何もないように見えるが、この空間の中央...そう、彼の前方辺りが、歪んでいるような......
突然、その空間が裂けた。そう、『裂けた』のだ。裂け目から覗く、ここではないどこかの暗闇が、この世界を侵食しようと這い出てくる。
明らかに危険なものだと思った。そして、その危険なものがまず最初に牙を剥くのは...
当然、目の前にいる、フォミットだろう!
その闇は、彼に覆いかぶさるように動いた。...飲み込むつもりなのだろうか。
このままでは彼が危ない。早急に手を打たなくては手遅れになるかもしれない、でも...私に出来ることは、何もない。
ただ、叫ぶことしか出来なかった
「……フォミットーーー!!!」
驚いたことに、口から出た言葉は、人間の言葉だった。
しかしそんなことは今の私にとって些細なことだ。だって、彼がーーー!!
「そう心配するな、アリア」
いつもの、あの頼もしい声が聞こえた
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